享保の倹約令と平成の失われた30年|経済が冷めた時代の「統制」と「知恵」

江戸時代の根付をつくってる人と、現代のリサイクルでミニマル派の堅実な女性
なりさん

「元禄のあとに享保の倹約令」「バブルのあとに失われた30年」の共通点ってある?

これは実に鋭い問いですな~。
「元禄のあとに享保の倹約令」「バブルのあとに失われた30年」──
どちらも「好景気のあとに訪れた長い反動期」として、日本の社会心理をよく映しています。
共通点、かなり多いです。整理してみましょう。


【1】どちらも「行きすぎた華やかさ」への反動

  • 元禄 → 享保(1716年〜)
    浪費と贅沢が蔓延。幕府の財政が悪化。
    → 徳川吉宗が「質素倹約」を旗印に改革を実施。
     芝居・遊郭・贅沢な衣服を取り締まり、米中心の質実剛健を奨励。
  • バブル → 平成不況(1990年代以降)
    投資と消費が過熱。資産バブル崩壊。
    → 政府・企業・個人が「節制・貯蓄・慎重」へ急転。
     ブランドより節約、攻めより守りの時代に。

つまり両者は、「快楽から倹約へ」の大きな揺り戻し。
人の心が、浮かれから慎重へ180度回転します。


【2】上からの「締めつけ」と下からの「萎縮」

  • 享保の倹約令:幕府が“道徳”を使って経済を締めた。
    →「ぜいたくは敵」「粋よりも実用」。町人文化が一時沈む。
  • 平成の失われた30年:政府・企業が“リスク回避”を合言葉に動かなくなる。
    →「挑戦より安定」「投資より貯金」。若者文化が内向きに。

両時代とも、体制が安全策をとり、民の気分が冷めていく構図です。


【3】「改革」はあったが、“心”は冷えた

  • 享保の改革(吉宗)=制度は整ったが、楽しさが消えた。
  • 平成の構造改革(小泉以降)=制度改革は進んだが、実感が伴わず疲弊。

どちらも、「経済合理性は進んだが、心の豊かさは後退」
人々の暮らしに張りがなくなった。


【4】庶民の「創意工夫文化」が生まれた

興味深いのは、倹約令下でも人々は工夫をやめなかったこと。

  • 享保期:質素な中で「小さな贅沢」「見えないおしゃれ」が発展。
    → 伊勢木綿・根付・小紋など“控えめな粋”が流行。
  • 平成期:ミニマルデザイン、カフェ文化、リサイクルファッション。
    → “節約の中の楽しみ”という美意識が誕生。

どちらも、抑制が新しい美を生んだ
つまり、「倹約の時代は“心のデザイン”が磨かれる時代」。


【5】社会の気分:希望より“慎ましさ”

スクロールできます
観点享保期平成後期
政府姿勢倹約・道徳・安定財政健全化・改革疲れ
経済状況成長停滞・貨幣流通抑制デフレ・賃金停滞
文化傾向実用美・小粋ミニマル・ナチュラル
心理傾向倹約・慎み我慢・節制
合言葉「もったいない」「コスパ」

→ 時代は違えど、“余裕のない豊かさ”という似た心境。


【6】結び

元禄もバブルも、経済が心をふくらませた時代。
享保も平成も、その反動として「心をしぼませた時代」。
だが、しぼんだ中にも、美と知恵が芽吹く。

豊かさは、財布で測れない。
倹約の時代こそ、人の感性が試される。

元禄とバブル|浮かれた時代が生んだ“粋”と“派手”の共通点』も興味深いですよ。

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参考・参照リンク(江戸時代)

※本カテゴリの記事は上記の史料・展示情報を参考に再構成しています。


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